何かはよくわからないけれど、マスタって大事なんでしょ?そんな風に思われている方もいるかもしれません。
もしくは、マスタが大切なのはわかっているが、なにがどう重要で、正しく管理運用ができていないことでどんな影響が出るのかを言語化ができていない。という方も少なくないのではないでしょうか?
私は、店舗数800店舗を超える小売企業にて物流部門の業務メンバーとして、自社システム刷新プロジェクトに5年間携わっております。
その中でも全社的なマスタ管理システムの構築に約2年参加した経験の中でも自身を含めマスタの重要性や価値を正しく理解し、管理体制を検討するに至るまで膨大な時間を要することなりました。
事前に理解をしておくことで、より円滑に、深く検討をするプロジェクトが推進できたのではないか?という思いから、この記事では具体例や経験談を含めてマスタについてご紹介致します。
この記事を読むことで、正しくマスタを管理できているとはどういうことなのか?マスタを正しく管理運用できることで得られるものがなんなのか?を把握し、マスタ管理を価値あるものするお手伝いができればと考えております。
マスタとは何か?
マスタとは、企業が扱う取引先情報や製品情報などを一元管理するための企業の中核データを指します。
具体的には、以下のような情報がマスタとして扱われます。
- 顧客マスタ:取引先企業や個人顧客の基本情報(名前、住所、連絡先など)
- 商品マスタ:製品やサービスの名称、仕様、価格、SKU(在庫管理コード)など
- 従業員マスタ:従業員の個人情報、所属、役職、連絡先など
- サプライヤーマスタ:仕入先や取引先企業の情報
これらはあくまで代表例です。業種や事業規模により、必要なマスタは変化します。
マスタは、会社全体で共通して使われる基本情報で、一度登録されると大きく変わらない安定した情報です。
一方で、マスタに似たものとしてトランザクションデータがあります。
トランザクションデータとは、日々の取引や業務の動きを記録する情報です。
マスタとトランザクションデータとの具体的な違い
目的
マスタ:業務の基盤となる共通の情報を提供し、全システム(全社)で一貫性を保つために利用。
トランザクションデータ:実際の業務活動の記録として、売上や在庫の管理、業績の分析などに利用。
変更頻度
マスタ:基本的に変更が少なく、長期間同じ状態を保つ。
トランザクションデータ:毎日の取引ごとに発生し、常に更新される。
マスタを管理すべき理由は?
自身の参加するプロジェクトでのマスタの整理を進めていく中で、マスタを正しく理解し、精度高く管理することで企業として大きな価値を得られることがわかりました。
同時に、システム刷新やDX推進を行なっていく中で、マスタが整っていないことが企業にとって大きな損失を与える可能性があることも知ることとなりました。
では、そもそもマスタを管理をするということはどういうことでしょうか。
マスタを管理するとは何か?
マスタを正しく理解をできているということは、以下の3つのことができるようになっていることだと考えます。

① 一貫した定義の作成
マスタの定義や対象範囲を正しく把握することで、どのデータが基幹情報として扱われるべきかが明確になり、重複や曖昧さを排除できます。
マスタの定義や対象範囲を定める方法としては以下のような情報から判断をしていきます。
業務プロセスとの直結性
各部署やシステムで共通して利用され、業務遂行に不可欠な情報であるかどうかを確認します。
使用頻度と重要性
日常的にアクセスされ、経営判断やレポート作成に頻繁に利用される情報であれば、マスタとして扱う必要性が高くなります。
データの一貫性と正確性への影響
誤りや不整合が発生すると、全体の業務プロセスや意思決定に大きな影響ものは基幹情報としての役割があるものと認識する必要があります。
統合の必要性
複数システムや部署で共有されることで、情報の重複を防ぎ、一元管理が求められる情報かも検討しましょう。
② 標準化とルールの作成
各システム間で共通のデータ項目やフォーマットが決まることで、データの整合性が保たれ、誤入力や不整合が防止されます。標準化やルールは、以下のような方法をとることで定めていくことが可能となります。
共通のデータ定義書を作る
すべての部署で「顧客名」や「商品コード」など、どの項目にどんな情報を入れるのかを決めた定義書を作成し、全社で同じルールでデータを扱います。
入力フォームの統一・チェック機能の導入
すべてのシステムで同じフォーマットの入力画面を使い、間違いがないように自動でチェックする仕組みを取り入れます。たとえば、住所の入力時に郵便番号が正しいか確認する機能などです。
ルールとマニュアルの定期更新と研修
データの取り扱いルールやマニュアルを定期的に見直し、最新の情報に更新します。また、新しいルールができたら全社員向けに研修を行い、誰もが正しい方法を理解できるようにします。
③ 運用プロセスの最適化
マスタの役割と重要性を理解した上で、更新や監査のための適切な運用手順や管理体制を整備し、定期的なデータクレンジングやモニタリングを行う必要があります。
マスタの管理を仕組み化し、長く・精度高く運用していけるように以下のような検討をする必要があります。
定期的なデータクレンジングの実施
不要なデータや重複している情報を定期的に整理し、常に正しい状態を保ちます。例えば、使われていない古い顧客情報を削除する作業などです。
データ管理の責任者と役割の明確化
各部署やチームにデータ管理の担当者を決め、誰がどの部分を管理するのかをはっきりさせます。これにより、問題が起きた場合もすぐに誰に連絡すればよいかが分かり、迅速な対応が可能になります。
自動モニタリングツールの活用
システムが自動でデータのエラーや不整合をチェックし、問題があればアラートを出す仕組みを導入します。これにより、問題に早く気づいて対処できるようにします。
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マスタを正しく管理をすることで得られる 5つのメリット
先に述べたような管理を行える状態になることで、マスタは最大の効果を発揮し、企業で有効的に活用していくことが可能になります。
マスタを正しく管理することで、企業は以下の5つメリットが得られます。

業務効率の低下の防止
マスタが正しく管理されずに重複した情報や誤った情報を保持している場合、確認・更新する作業が増え、余計な手間と時間がかかります。都度情報の精度をチェックすることが必要なり、全体の業務効率が下がることになります。
意思決定の精度向上
データのばらつきがないことで、正確な分析やレポートができ、経営判断しやすい環境を構築することが可能になります。
昨今のDXのベースになる部分です。どんなに良いシステムや機能があったとしても分析をする元の情報精度が低いと企業の持つマスタの価値を発揮することができません。
コストの削減
重複や誤情報があれば、データクレンジングや排除にかかる作業負担が非常に大きくなります。また、企業内で運用ルールが徹底されていれば、必要以上にお金をかけてマスタ登録する際の制限、制約をシステム的に実装をする必要がなくなります。
顧客満足度の向上
顧客情報が一貫していないと、サービス提供や対応にばらつきが生じ、顧客の信頼を損ねる可能性があります。
業務間連携の整流化
各部署やシステム間で情報が統一されていることで、連携ミスを抑止するすることができ、プロジェクトの進行や内部コミュニケーションを円滑に進めることが可能となります。
まとめ
正確なマスタ管理は、企業の業務効率向上、意思決定の精度向上、そして無駄なコストの削減に直結します。
一貫した定義の作成、標準化とルールの確立、そして運用プロセスの最適化が確立されることで、各部署間の情報の不整合や重複が防がれます。これにより、システム間でのデータ共有が円滑になり、正確なデータに基づいた意思決定が可能となります。
結果、現場での作業効率が向上し、経営判断に必要な正確な情報が提供され、企業全体のパフォーマンスが大きく向上します。
ぜひ、「マスタの構造と定義」や「マスタ管理システムの構築」に関する記事を参考にし、自社のマスタ管理プロセスを見直してください。正しいマスタ管理を実現することで、企業の競争力をさらに高め、未来の成長に繋げましょう。